やぶいぬ応援団

膵臓癌闘病記や生還者のアドバイス、新薬の治験情報や研究など元気が出る話題を個人が集めたブログです。 <免責事項>本ブログは特定の治療法や薬の使用を推奨するものではなく、このブログの情報を利用した結果について筆者は責任を負うことはできませんのでご了承ください。

がんばらなくていい

CaddoLake


5年前のものですが、以下の記事をごらんください。

闘う姿勢は生存と無関係
 (共同新聞社 2002年11月26日)

 がん患者にとって、がんと闘う意志を持つことは、予後によい影響を与えると考えられてきた。


 英国医学研究評議会(MRC)の研究者らが、がん患者ががんに対して闘う姿勢を持ったり、望みを失ったり、否定しようとしたりする心理的影響について、計37の論文を調べた結果、生存期間や再発と関係する証拠は見られなかったと英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル11月9日号に報告している。


 それによると、22の論文では、心理的姿勢は生存や再発への関連は見られず、「影響がある」とする論文は小規模な研究か方法論的に欠陥のある論文で、変数の調整が欠けているという共通点があり、潜在的な先入観が見られたという。


 論文数がまだ少ないとしながらも、結論として、がん患者には、あえて特定の闘う姿勢を持たせるよう、押しつけるべきではないとしている。


上の論文のもう少し詳しい報道。ネット上にはもう記事が残っていないので「Internet Archive」上の記録を貼っておきます。

「癌と闘う姿勢が予後を左右」説に確たる根拠なし
 (日経BP MedWave 2002年11月14日)

 精神力が病気に影響するという、いわゆる「病は気から」との見方は洋の東西を問わないが、こと癌に関しては必ずしも当てはまらないことがわかった。・・癌患者が病気に対し、無理に「頑張る」ことが必要かどうかを再検討すべき時期が来たと言えそうだ。・・


 病気に対して「闘志」のある癌患者では生存率が高い、「無力感や絶望感」があると生存期間が短い−−。こんな研究報告を目にした人も少なくないだろう。欧米では約20年前から、癌の予後と精神状態との関連に注目が集まり、こうした研究結果に基づいて「癌患者の治療や療養には心理的介入が重要な意味を持つ」と考えられてきた。しかし一方で、精神状態と癌の転帰との関連性を否定する論文も散見していた。


 そこで、英国のMark Petticrew氏らは、代表的な医学論文データベースである「メドライン」などを用い、癌の転帰と精神状態との関連を調べた研究を網羅的に抽出。死亡率、生存率や再発を評価項目とする前向きコホート研究に絞り、個々の研究内容について詳細な分析を加えた。・・


 分析対象として選ばれた研究数は計37件。26件が生命予後、11件が癌の再発に関して、精神状態の影響を検討した研究だった。癌の種類別では、乳癌に関するものが20件と最も多かった。・・


 Petticrew氏らはまず、これらの研究の質を、1.対象者は癌患者の典型例か、2.解析に当たり、病期や病状、治療法など患者背景のばらつきを補正しているか、3.罹患初期からの精神状態を分析しているか−−という三つの観点で評価した。すると、すべての基準を満たしていたのは37件中13件に過ぎないことがわかった。・・


 次にPetticrew氏らは、研究の対象者数と結果との関連を調べた。その結果、比較的規模の大きな研究では相反する結果が報告されているのに対し、規模の小さな研究では、結果が「癌と闘う姿勢と転帰とに相関がある」との方向に偏っていることがわかった。・・


 このことからPetticrew氏らは「免疫系や神経内分泌系など生物学的な面からは、両者(精神状態と癌の予後)の関係性が“もっともらしく”見えるが、それを支持する科学的根拠はない」と結論付けた。


 さらにPetticrew氏らは、「『前向きに考えなさい』などの言葉で癌患者を励ますことが、かえって心理的負担を与えている恐れもある」と指摘。少なくとも癌患者の生命予後という観点では、「従来行っていたような、無力感や絶望感のある患者への積極的な介入は不適切ではないか」と考察している。 ・・


原論文へのリンク(全文閲覧可能)。この論文に対しては賛否両論の議論が起こりました(参考)。


とりあえずの結論としては「がんばって癌と戦った方が良いという証拠は『まだ見つかっていない』」ということになるでしょうか。本人の気分はどのように体の免疫力に影響を及ぼすのか? 周りの家族はがんばれと励ました方が良いのか、それとも励まさずに普通に接するのが良いのか? このあたりは今後さらに研究が必要なようです。


蛇足:リンク先は緩和ケアなどで有名な鎌田先生の講演録「がんに負けないための7か条」です。肝臓に転移した膵臓がんで10年ご活躍された中村さんの話が少し出てきます。


追記:「化学療法とうつ状態・サイコオンコロジー」の記事もごらんください。

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