アキシチニブの臨床試験について
日経BP社のサイト「がんナビ」の「開発中の抗がん剤」には、すい臓がんへの臨床試験を検討している薬として「タルセバ(エルロチニブ)」、「AG-013736(アキシチニブ)」、「エルプラット(オキサリプラチン)」の3つが挙げられています。(タルセバは肺がん、エルプラットは、大腸・直腸がんの薬として日本で既に承認されています。)このうちタルセバとアキシチニブについては、臨床試験(治験)を日本で受けることができるようです。
タルセバに関しては過去記事1・2・3などで触れましたので、今回はアキシチニブについてまとめます。アキシチニブは飲み薬(経口)の分子標的薬で、血管新生阻害剤と呼ばれるタイプの薬です。
がん(腫瘍)は、栄養や酸素を得るために新しい血管を作って引き込もうとします。この現象を血管新生と呼びます。この血管新生を阻害してがんへの血液や栄養の供給を断ち、がんを兵糧攻めにするという薬が、血管新生阻害薬です。(このあたり「九州大学教育・研究の最前線」のページ(医学研究院桑野教授による)を参考にしました。右上の図もそこから取っています。)
すい臓がん細胞は、VEGF (血管内皮細胞増殖因子)という血管新生を誘導する物質を産生することで新しい血管を呼び込みます。ここを阻害するのが今回のアキシチニブです。アキシチニブは、VEGFの受容体を阻害して、血管側がVEGFのシグナルを受け取って増殖できないようにするそうです。
あくまでも「がんを兵糧攻めにする薬」なので、すい臓がんの場合これだけで完治するというものではなく、他の抗がん剤と一緒に使うことが多いようです。
製薬会社ファイザーがアメリカで行った第2相臨床試験(103人が参加)の中間報告(英文)では、はっきりとした差は出なかったもののゲムシタビンとアキシチニブを両方投与された患者の方がゲムシタビンのみの患者に比べて長く生存する傾向が認められました。
日本では今年の初めから(世界的には去年7月から)、すい臓がんを対象とした第3相試験が行われているようです。患者は無作為に、ジェムザール単独かジェムザールとアキシチニブ併用のどちらかに割り付けられます。日本医薬情報センターのサイトで、試験薬剤名にAG-013736と入力すると情報が検索できます。試験への参加には、以前にゲムシタビンなどの抗がん剤で治療された人は参加できないなど、いくつかの制限事項があるようです。
すい臓がんの場合、有望なカードをできるだけたくさん持っておけば道が開けるのではないでしょうか。主治医などから治験への参加を勧められた方は、積極的に検討しても良いと思われます。
参考:
腎がん患者の治験体験記
ASCOでの発表(がんナビ 2007年6月11日)
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