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膵臓癌闘病記や生還者のアドバイス、新薬の治験情報や研究など元気が出る話題を個人が集めたブログです。 <免責事項>本ブログは特定の治療法や薬の使用を推奨するものではなく、このブログの情報を利用した結果について筆者は責任を負うことはできませんのでご了承ください。

スティーブ・ジョブス没後1年。すい臓がんについて分かったこと

アップルコンピュータの創業者スティーブ・ジョブスは、亡くなって1年を経た今もアメリカ人の心の中でカリスマとして生き続けているようです。スティーブ・ジョブズ I


経済誌フォーブスに、ジョブスの追悼記事がまた出ていました。すい臓がんに関する部分を抜粋して紹介します。

スティーブ・ジョブスの死から1年。彼について、膵がんについてさらに明らかになったこと

2012.10.5 アリス・G・ワルトン


スティーブ・ジョブスほど、死後になってもその病気の治療方針が熱心な議論の的となった人物は珍しい。ウォルター・アイザックソンが書いた伝記がきっかけとなって、死後数週間も経たないうちにジョブスは少なくとも最初のうち現代医学を遠ざけて代替医療を行ったことで治癒のチャンスを減らしてしまった(参照)という認識が共通のものとなった。評論家たちは、もしジョブスが他の方法を選んでいたなら今でも生きていた可能性が高いと言う。それが本当かどうかはもちろん誰にも分からないが、議論はまだ活発に続いている。


さて、一年が過ぎた。我々はいまだに彼の治療方針や彼の病気や彼のプライベートな生活(や、もし生きていたら副社長ティム・クックとどんな仕事をしていたか)について話しつづけている。実際のところ、こと癌の治療に関して言えば誰にでもすっきりあてはまる正解というものはないのだ。そして、膵がんはあらゆる癌の中で最も治療の難しい癌なのである。


コンピュータ技術とがんの治療はどちらも進歩し続けているが、進歩のスピードは両者同じではない。癌について我々が理解しつつあること、そしてジョブスについて理解しつつあること、どちらもまだまだ発展の途上だ。しかしここに、現在までに分かったことを書いておこうと思う。

膵がん研究の最新知見

幸運と言えるかどうか、ジョブスは非常に珍しい、ただしより致死性の低いすい臓がんにかかっていた。神経内分泌腫瘍(参照)である。もう一つのタイプ、いわゆるすい臓がん(腺がん)は、ニューヨークのスローン・ケタリングがんセンター病院消化器腫瘍科のソルツ医師によると、診断からわずか6ヶ月で亡くなってしまうことも多いようだ。


膵内分泌がんには様々なタイプのものがある。過剰ホルモンを多く産生するものとあまり産生しないものだ。がん細胞がどれほど変異しているかは、患者の予後にある程度相関している。ソルツ医師は「神経内分泌腫瘍の方は、診断後何年も何十年も生きる方もいますね」と語る。
「どうしてこれほど性質に違いがあるのかを解明する事は非常に重要な事だと考えています。普通の細胞がどうしてがん細胞になってしまうのか、がん細胞になったときに何がその振る舞いを決めているのか? どうしてある癌は肝臓に転移し別の癌は肺に転移するのか? どうして脳に行ったり骨に行ったりするのか?」


研究者たちは、まだこうした基本的な疑問と戦っている段階だ。「車の故障を直すときも同じですが、癌研究者たちはまず車がどうやって動いているのかを理解して、それからようやくどこが故障しているのかを探る事ができるのです。」
がんというものの本質、そして現在研究のターゲットとなっているのは『遺伝子』である。「ある遺伝子は変異し、またある遺伝子は抑制される。そしてまた別の遺伝子が活性化する。この変化の組み合わせのうちのどれかが、がんの進行をコントロールする鍵であるはずです。」とソルツ医師は付け加えた。


すい臓がんや神経内分泌がんをほかの臓器に転移する前に早期発見することができれば、大きな武器になると思われる。しかしそれが近い将来可能になるかどうか見通しは立っていない。「今のところその答えは『難しい』と言わざるをえませんが、将来的にはそれも可能になるかもしれません」ニューヨーク・プレスビテリアン病院外科部長・すい臓センター長のマイケル・リーバーマン医師は述べた。「残念なことに、すい臓がんの場合には大腸内視鏡検査や子宮頚がんの塗抹検査に対応するようなものはありません。また、すべての人にCT検査やMRI検査を受けていただくことも経済的な観点から考えるとできません。」


「ひとつ分かっていることは、検査はたくさん受ければ受けるほどいいというものでは必ずしもないということです。検査で得られた情報をどのように自分の治療方針決定に役立てていくか、ということをよく考えなければなりません。ある報道によれば、ジョブス氏は自分の遺伝子を全部読んでもらったそうですね。でもそれが役に立ったとは考えにくい。人間は約2万個の遺伝子を持っていますし、その2万個分の情報を持っていたからといってさてどうしたらよいのかということは今の段階ではさっぱり分からないのです。自分の集めた情報がすべて何らかの役に立つとは限らないことに留意しておく必要がありますね。」


「長期的にはがんの遺伝子地図の作製は必須のテーマだと思いますが、でも歴史上のこの時点では、そして一人一人の患者に取ってみれば、そうとは限らないのです。


どこに金と時間をかけるかというの非常に複雑な問題でーそして神経を使うー問題なのです。なぜなら、人生の「価値」をどこに置くかという問題につながるからです。何百億円ものお金を、一人の人をわずか数ヶ月延命するだけの治療法を探すのにつぎ込むことは決して賢いこととは言えないでしょう」とソルツ医師は語る。「わずかな改良が「画期的な」進歩と喧伝されることもありますが、私たち一人一人の為にはちっともなっていなかったということもありえます」


ジョブスの治療上の選択が、賢いものであったかどうか、あるいは別のもっと良い方法があったのかどうかは分からない。彼は多方面から、通常の治療を受けるのを何ヶ月も引き延ばしていたといって批判されてきた。神経内分泌腫瘍はいわゆるすい臓がんより致死性が低いので、標準治療を急いで受けたとしても結果はあまり変わらなかったかもしれない。「それでもね。ジョブスは肝臓の移植手術を受けたと言われていますね。これはあまり広く行われている治療法ではありません。」米国立がん研究所の消化器・神経内分泌がん治療部長、ジャック・ウェルチ氏はこう語る。「主治医たちが別の話をスティーブ・ジョブスにしていれば、ジョブスのことですから、違った治療法を選んでいたかもしれませんよ。」しかしこの話も、今となっては検証不可能になってしまった。

ジョブスについての最新情報

ジョブスの死以降、メディアは躍起となって『本当の』彼の姿を明るみに出そうとしてきた。エレベーターの中で会った部下を即クビにしたり、公の場で他人を罵倒したりと短気で自分勝手なCEO像を裏付けるエピソードには事欠かない。しかしそれは全てアップルという会社を成功させるため、そしてもちろん、テクノロジーに革命を起こすためだったのだ。…


一つだけ確かなことがある。ジョブスは鋭い決断力のある人だった。1995年の失われたインタビューの中で、ジョブスは自分のことを「自分の間違いはちゃんと認められる人間だ」と語っている。それは彼が渇望してきた自己の成長につながるというのだ。「自分が正しいかどうかにはあまり関心はない。ただ成功すること、それだけに関心があるんだ」
(後略)

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