がん治療にiPS細胞を活用
画期的な治療法の確立につながるかもしれません。熊本大は、iPS細胞からがんと戦う細胞を作成して膵臓がんのマウスに投与したところ大きな効果があり、がんがほぼ消滅する個体も出たと発表しました。
がん治療にiPS細胞活用 千住熊大准教授ら 2013年07月15日(くまにちコム)
熊本大大学院生命科学研究部の千住覚准教授(51)=免疫識別学=らの研究グループが、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った免疫細胞を、がんが腹腔[ふくくう]に広がって治療が難しいがん性腹膜炎や、膵臓[すいぞう]がんの治療に活用する技術を開発した。2〜3年以内に臨床試験に向けた審査を学内の倫理委員会に申請する方針。
(中略)同准教授は2011年までに、iPS細胞からマクロファージという免疫細胞を大量に作る技術を確立。免疫細胞が細菌など特定の対象を攻撃する仕組みを、がん治療に応用する研究を進めてきた。
グループは、免疫機能をなくしたマウスの腹腔内に、ヒトの胃がんや膵臓がんの細胞を移植。作製した免疫細胞を腹腔に注射すると、がん組織の内部に入り込んだ。この細胞の遺伝子を操作して抗がん作用があるインターフェロンを生産する機能を持たせたところ、がんの領域が小さくなり、細胞の増殖を抑える効果を確認できた。
特に、膵臓がんの細胞を移植したマウスの中には、がんがほぼ消滅する個体も出るなど効果が大きかった。
一方、治療しなかったマウスは、約2週間で腹腔全体にがんが広がった。
治療が実用化されれば、がん性腹膜炎が確認されても、胃がんを切除できる可能性が出る。千住准教授は「がん患者には待ったなしの人が多い。治療に役立つ研究を急ぎたい」という。(後略)
原論文はこちら。写真では、iPS細胞から作ったインターフェロン産生d免疫細胞を投与されたマウスで、がん組織(カラーの部分)が急速に縮小していくところが示されています。
(20130821追記)iPS細胞を使った臨床研究をする上での注意点を国がまとめたそうです。(読売新聞の記事)
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