やぶいぬ応援団

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ウォルター・リーマンの記録(抄訳)(4)

(3)より続く
元サイト:http://www.pancreatica.org/story_Leaman.html

 次に書く小話は、患者にもそのパートナーにも重要な教訓となるだろう。CTスキャンが難しくなった現在、ウォルターのカルテの表紙にはでかでかと「造影剤使用禁止ー腎臓障害の可能性あり」と書かれている。一度、ごく最近、点滴の針が差し込まれて横になったウォルターがCTの輪の中に入ろうとしていたまさにその瞬間、ウォルターが声をあげた、「ちょっと確認なんですがーその点滴に造影剤は入っていませんよね?」 入っていた! そしてウォルターが一言声をかけてくれたことに、文字通り皆が感謝したのだった。医療従事者はプロではあるが、彼らも人間なのである。間違いは起こらないだろうと盲信せずに、自分の身は自分で守らなければならない。


 友人たちは、リーマン夫妻にとっては天からの贈り物だった。特に、二人の闘いが終わるのはすべてが終わりになるときだと知っているので、何月経っても何年経っても変わらず救いの手を差し伸べてくれた友人がそうだ。


 友人たちへのアドバイスー「今日はやることリストには何がのってるの?」と尋ねる。友人たちも隣人たちもあなたを助けたいのだが、何をしたらよいのか分からないことが多い。よくあるのは、必要があれば呼んでくれと言うことである。同じように見えるが重要な点で異なるのは、ある友人の言葉だ。今日、君のやることリストには何がのってるの…僕が手伝えるのはどれだい? 「僕のリストの中身は、治療とは関係がなかったり、大したことじゃなかったりするものもたくさんあった。車のオイル交換とか、ドライクリーニングを受け取りに行くとか。こんなことが重荷になるなんて考えたこともなかった。でも実際には、あの時には優先順位の高いことが他にあったから、ささいなことがすごく重荷になったんだと思うよ。」 また、友人たちがそう申し出てくれれば、家族が「今日はあなたのために何でもしてあげられるわ」と言うチャンスを増やすことにもつながる。


 「悪気はないけど言ってはいけない言葉」は何? ジーンが挙げた代表例は、「彼の容態は、本当はどうなの?」であった。「それから、化学療法を受けている間、患者にはまったく楽しいことがないなんて思わないでくださいね。私たちはいつもずっと『病気で苦しんでいる』というわけではないんです。時々外食するのも大好きなんですよ!」


 笑いは、時に最良の薬である。ジーンは語る。「私自身のためにも、笑いが必要でした。ウォルターには薬が処方されていたけれど、私には何も無かったんですから! 毎日一度は、気晴らしをして現実から離れることが必要でした。テレビと、ジョークと、笑いという特別な友人は必需品だったわね。」


 リーマン夫妻に取っての笑いのパワーは、以下の2つの話に読み取ることができる。
 夫妻が最初に病状を知って治療に必要な医療費の額を概算したところ、今までの生活をかなりレベルダウンしなければやっていけないだろうということがわかった。ジーンは状況を一人で引き受けて、実際にガレージセールを開くところまでやった。アパートに引っ越したらこんなにたくさん物は入らないと思ったので、いろいろな物を山ほど売り払った。だがしかし。翌年の春、状況が上向きはじめたころ、ウォルターは毎年恒例の庭にトマトを植える準備をしていた。ところがクワが見つからない。 「おーい、どこかでおれのクワを見なかったか?」ジーンは蚊の鳴くような声で答えた。「あら、それは残念ね…!」


 診断が下りる少し前のこと。ウォルターはジーンに説得されて、補聴器を買うためにかなり高額の金を払う羽目になった。診断が下って間もない時期には、暗く恐ろしい日々がもちろんあった。「その時ジーンが言ったんですよ。あのくそ補聴器にあれだけ投資したんだから、元を取るまでは絶対にあの世には行かせないからね、って。」


(アリソン・ワイリーによりインタビューを再構成したものです。ワイリーは口述伝記作家で、個人や会社の大切な物語を思い出して記録に残すお手伝いをしています。)


(終)

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