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"ケモブレイン"の話

HopeBear



〜11月はすい臓がん意識向上月間です*1


「ケモブレイン」聞き慣れない言葉ですが、例としては以下のような女性が挙げられます。

Aさんは大学卒で、自分では頭が切れると思っていました。マーケティングコンサルタントとしてトロントに会社を設立し、それを成功させていたからです。


でも数年前、Aさんは38歳の時に乳がんの化学療法を受けて「ケモブレイン」のひどい例になってしまいました。ケモブレインとは認知障害の一種で、考えを集中できなかったり物覚えが悪くなったりするものです。近年、がん患者や医師の間でケモブレインは化学療法と関連しているという意見が多くなってきました。


3回目の化学療法を始めるにあたって、Aさん(匿名希望)は「頭がシャープに考えられなくなり、物を記憶するのがものすごく難しくなったんです。まるでお酒をのまずに酔っぱらっているみたいな感じでした。」と語りました。


以前はがんに伴う不安やうつによるものだと見過ごされてきた認知障害や気分の変調が、しだいに化学療法の副作用の一種だと認識されるようになってきています。ケモブレインは元々は乳がんで研究されてきたものですが、(治療が長期にわたることも多い)で研究されてきましたが、もちろん他のがんでも起こりうることです。


抗がん剤は通常「脳血液関門」というバリアがあって脳の中には入らないので、ケモブレインの原因はまだ良く分かっていません。今考えられている原因としては抗がん剤が脳の血流や代謝を変化させる可能性の他に、体内で抗がん剤に反応してサイトカインという化学因子が産生されるためであるとか、体内のホルモンバランスの変化、抗がん剤の副作用を抑えるために使われる吐き気止めやステロイドなどの薬剤が影響している可能性もあります。


幸いなことに、ケモブレインの発生率はそれほど高くありません。1998年に発表されたある研究では、標準量の化学療法を受けた人の17%に認知障害が認められたそうです。(高用量では32%)また、症状は軽度から中程度ですむそうです。トロント大学のタノック医師によれば、「こうした女性たちは認知症になってしまうわけではなく、ごくわずかな障害ですみます」とのこと。ケモブレインの症状は一時的なもので、通常化学療法を止めるとなくなるそうです(参考)。


治療法としてはまずは専門家への相談および薬物療法です。内科医や外科医の間では「ケモブレイン」という単語はあまり知られていないかもしれませんので、症状が気になる方は精神科専門医に紹介状を書いてもらうとよいでしょう。精神科医には抗がん剤の精神面での副作用に関する知識が普及してきているそうですので(ある精神科医は「化学療法を受けると、頭が強制冬眠状態になるんですよ」と説明していました)、一度相談してみてはどうでしょうか。


自分でできるケモブレイン対策としては、CancerCareにいくつかのパンフレットがありました。”Doctor, Can We Talk About Chemobrain?””Combating Chemobrain: Keeping Your Memory Sharp” などが英文ですが役に立つと思います。


あるいは、こんな予防法はどうでしょう?
野菜は脳を5歳「若く」する


注:ちなみに、すい臓がんや糖尿病など、膵臓に関係した病気ではうつ状態になる方が多いそうです。また、進行したがんでは特にうつ状態になる方が多いと言われています(参考)。「すい臓がんとうつの関係」、およびその対策についてはおいおい記事を書いていきたいと思います。


追記(11/23)ー治療が長期化してくると、介護をする家族にもストレスがたまります。介護者のストレス解消法については、6月1日7月27日のエントリーで書きました。

*1:写真はPanCAN(http://www.pancan.org/store/index.html)で販売しているHope Bear。体長約22cm。一体10ドルで、日本からも購入は可能ですが送料が25ドルかかってしまうそうです。売上の一部がPanCANに寄付されます

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