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ウォルター・リーマンの記録(2005年12月記)

※ウォルター・リーマン氏は膵臓がんとの勇気ある闘いを2006年10月27日に終えました。

データ

 ウォルター・リーマンは2002年8月、59歳の時に膵臓がんと診断された。手術は不可能であったため、化学療法の臨床試験が行われた。最初はジェムザールとシスプラチン、後にジェムザールとオキザリプラチンが使われた。治療はカリフォルニア州立大学サンフランシスコ校(UCSF)で行われた。ここには、国立がん研究所で認定されたがん治療センターがある。主治医は、腫瘍治療部部長のマーガレット・テンペロ医師である。この物語では、ウォルターを支えた妻、ジーン・リーマンも重要な役割を果たしている。

背景

 ウォルターとジーンは、サンフランシスコから東に約50kmのダンヴィルという所で自営業をしている。子供は3人おり、娘の一人は、ウォルターの診断から治療までの間、夫と子供と一緒に同居してくれた。

医学的経過 - 診断

 2002年春、胃の調子が悪かったウォルターは掛かりつけ医のもとを受診した。それから四ヶ月間は、次第にひどくなってきた胃潰瘍の原因を探すのに費やされた。二人目にウォルターを診察した一般内科医のローエル・クラインマン医師は、内視鏡検査と生検を行うことにした。それも陰性だったので、クラインマン医師はついに、試験的に腹部手術を行って本当の原因が何なのか突き止めることを決断した。


 担当外科医は非常に評判の高い医師であったが、膵臓がんの専門家ではなかった。手術の翌朝、まだ夜があける前に、外科医はウォルターの病室に現れてこう告げた。「リーマンさん、あなたのご病気はリンパ節の腫瘍だと私は思っていたのですが、違ったようです。大変残念ですが、あなたは膵臓がんで、胃と肝臓に広がっていました。リンパ節も少し巻き込まれています。手術はできないと思います。」こう言うと、外科医は文字通りの暗闇の中にウォルターを残して去ってしまったのだった。


 腹腔鏡検査では、膵臓の体部から突きだしている大きな腫瘤が見つかった。腫瘍は胃の後壁にくっついていた。肝臓にも腫瘤があり、生検で悪性と判定された。


 ウォルターの心は真っ暗になった。「ちょっと胃が痛いぐらいだったのが、どうして死ぬ寸前なんてことになってしまうんだ? それも、こんなに短期間で?」 ジーンの反応は少し違っていた。診断がつくまでの長い待ち時間の間に, ジーンはインターネット上の情報を徹底的に調べた結果、真実に到達していたのであった。痛みの症状と場所から判断すれば、病気の原因は膵臓に関係しているのではないか。ジーンがその可能性を最初に内視鏡検査をした消化器内科医に話したときには、医師は否定的だった。「でも最後に病名がわかった時には、私は別にびっくりしなかったわ。」


 その後の数週間は、まるでシュールレアリスムの絵のような現実離れした時間だった、と二人は口を揃える。「悲嘆のプロセス」と呼ばれる段階だ。しかしそうしたニュースに接したあとの最終的な反応は、夫婦の間で違う場合も多い。ウォルターとジーンがそうだった。当時の心境を尋ねられて、ウォルターはこう答えた。「あきらめ、かな。」ジーンは「反撃ののろしをあげる感じ」と表現した。ウォルターはプールのフィルターの掃除のしかたをメモにまとめ始めた。ジーンは希望を求める旅に出た。


 二人がたどりついた場所は、サン=ラモン地域医療センターだった。そこでは、腫瘍治療部の部長、ピーター・ウォン医師との出会いがあった。その頃には、リーマン夫妻の目的は非常に遠慮深いものになっていた?あとどのぐらい生きられるのか教えてほしい、ただそれだけだった。驚くなかれ、ウォン医師の設定したゴールはそれとはまったく異なるものだった。「1年以内に、ウォルターさんにゴルフコースに復帰してもらいましょう。」それは、あの非情な診断を下されて以来初めて聞いた前向きな知らせだった。涙と、そして可能性が流れはじめた。


 ウォン医師は、知り合いのマーガレット・テンペロ医師(カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校(UCSF)腫瘍治療部部長)が数種類の臨床試験を実施中なのを知っていた。「あなたを助けられる人がいるとすれば、ドクター・テンペロ以外にはいないでしょう。」偶然にも、特に有望な臨床試験がちょうど始まるところだった。それは、現代のがん治療でよく使われるようになった2つの薬剤、ジェムザールとシスプラチンを組み合わせたものだった。
(つづく)

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