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エキスパートに聞く:膵臓がん治療のまとめ spring 2005

yabuinu52006-07-16

  • 膵臓がんについて我々が知っていることは、乳がん前立腺がんで言えば20年前のレベルだ」ーJames L. Abbruzzese
  • テキサス州MDアンダーソンセンターの James Abbruzzese 教授 (JA) へのインタビューLustgarten Foundation による)からの抜粋です。
  • (追記)このインタビューは、2005年に行われたものです。2007年に行われた専門家の講演会の翻訳をこのページから読むことができますので併せてご参照ください。

(前略)
(問)自分が受けている治療以外の治療法の話を主治医に質問したりするのは、なかなか患者にとってはむずかしいことが多いです。主治医と治療方針について討論するときのアドバイスがありましたらお教えください。
(JA)医師は患者から治療法について聞かれた場合に、はぐらかしたりしてはいけないと思っています。一人の患者さんは他の患者さんとつながりがあることが多いですし、そうなると自分の受けている治療が他の人と違うのはどうしてか疑問がでてくることもあるでしょう。まあ、患者さん一人一人の状況はそれぞれ大きく異なっていることが多いですから、たいていそうした疑問はりんごとみかんを比べてどうですかというようなものになってしまうものですが。しかし、主治医に質問しにくい状況というのはあるべきではないですし、もしそうなっている場合には、主治医が本当に自分に合った人なのか考えてみる必要がおそらくあるでしょう。


(問)「補完医療」とか「代替医療」と呼ばれるような治療法を膵臓がんの治療に使うことについてはどうお考えですか? たとえば、ビタミン剤や健康食品は治療中の患者に役に立つと思われますか?
(JA)補完医療や代替医療が有効かどうか検証するために行われた信頼できる試験はほとんどありません。ビタミン剤は免疫能を増進してがんと闘うと言われたりしていますが、それが証明されたことはまだありませんし、補助食品で体の免疫が変えられるという証拠もありません。実際のところ、体の免疫を変化させると進行がんに影響を及ぼすことができるのかどうかということでさえほとんどわかっていないのです。こうした療法の中に有効なものがあるかどうかについては、とにかくもっと研究が必要です。
 市販されているサプリメントは、特にインターネットで買えるものは何種類もの色々な化学物質と自然界の物質とを混ぜ合わせたものですし、その組成や、抗がん剤とどんな反応をするかについてはあまり良く分かっていません。例えばセントジョンズワートは化学療法の効果を引き下げる方向に働くようですので、その使用についてはもちろん大変心配しています。サプリメントが(抗がん剤と)相互作用をすることによって毒性が強まったり、肝臓の問題をひき起こしたりすることについてはもっと注意していく必要があるでしょう。リラックス法の訓練や、ヨガや、運動や、音楽を治療に取り入れていくことについてはわたしはあまり問題があるとは思いません。こうしたものは、効果はより大きく害はより少ないと思われるからです。


(問)「痛み」は膵臓がんの患者が直面する最も恐ろしい症状なのではないかと思います。痛みのコントロールはどのぐらいうまくいくものですか。
(JA)99%の患者さんに関しては、痛みをうまくコントロールすることはそれほど難しくありません。内服の痛み止めや貼る痛み止めが使えますから。強い痛み止めのあまり歓迎できない作用のひとつは、疲労感と眠気です。ただしこうした副作用には対処する補助薬があります。多くの患者さんに関して言うと、強い痛みを我慢しなければいけない理由は全くありません。なぜなら、非常によく効く薬がありますし、ペインクリニックの専門家であればさらに精巧な神経ブロックなどの手段をつかって残り2-3%の本当に痛みで苦しんでいる患者さんにも対処できるからです。


(問)膵臓がんの治療について)患者が知っておくと希望が持てるような、最近の重要な進歩はありますか。
(JA)一番希望の持てることの一つは、ほんの10年前に比べても膵臓がんという病気が今ではずっと注目されるようになってきたということでしょう。ここまでくるには色々なグループの尽力がありました。例えば、この Lustgarten Foundation や NCI(国立がん研究所)などです。(中略)この病気には今ではずっと多くの力と注目が集まるようになってきています。これがこの病気についての一番ポジティブな進歩だと思います。
 膵臓がんに関して、われわれはまだブレークスルーとなるような特定の薬剤や治療法を手にしたわけではありませんが、こうした努力の積み重ねで、ブレークスルーが起こる日は近いと言えるようになってきました。乳がんではブレークスルーが起こりました。前立腺がんでは今ブレークスルーが起こっています。そして大腸がんについては、ここ5年間で革命的な変化が起こり、この病気の性格や管理法についてのわれわれの思考はすっかり変わってしまいました。大腸がんの治療とともに、予防についても重要視されるようになってきています。膵臓がんは、我が国のレーダーの視野に入ってきました。議会はNCIに膵臓がんにもっとエネルギーと努力をつぎ込むように圧力をかけています。なぜなら、この病気で亡くなる方は癌の中で4番目に多いからです。

 
(問)非常に大きな進歩がもうまもなく起こると考えていらっしゃるようですね。
(JA)その進歩にどれだけ近づいているのかはわたしには分かりません。膵臓がんの基本的なことについてもまだ多くが研究中なのです。膵臓がんについてわれわれが知っていることは、乳がん前立腺がんで言えば20年前のレベルです。たいへん難しい病気なので、これまではあまり積極的に研究の気運が高まってこなかったのです。歴史的には、痛み止めを処方する以上のことはあまりしてきませんでした。でもこうしたことは完全に変わりつつあります。いつという時間的なことやブレークスルーの内容についてはわたしは分かりませんが、ブレークスルーが起こるということだけは、わたしは確信を持って言えます。この病気を克服しようと人々がこれだけ努力しているのですから。乳がんや大腸がん、前立腺や肺癌に比べるとまだ少ないものの、研究に向けられる資金はどんどん増えています。Lustgarten Foundation のような取り組みはこうした進歩やブレークスルーなどを可能にするための最も重要なものでしょう。

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