ランス・アームストロングの提言
アメリカのがん患者の治験*1 参加率は5-10%。それでも新薬が次々に開発されるため、参加者が足りません(参考)。そこでアメリカでは、治験への参加を呼びかける運動が盛んです。
ランス・アームストロングはツール・ド・フランスで前人未到の7年連続総合優勝を成し遂げた自転車選手ですが、ステージIVの精巣がんを克服したサバイバーでもあります。(参考記事。「イエローリボン 希望の部屋」のこちらに詳しい説明が載っています)彼は引退後、アメリカ大陸を自転車で横断しながらがん治験への参加を呼びかけました(記事1、2)。彼が治験について述べた言葉を紹介しましょう。原文はここです。
知識は力になる
ツール・ド・フランスで7回優勝した癌の克服者ランス・アームストロングは、「備え」の重要性を知りつくしています。特に癌のような敵に立ち向かう時には。勉強を重ねることで、がん患者は治験を含めた自分の選択肢をより正確に検討できるようになります。ランスはこう言っています。『世間では癌の治験では偽薬を投与されるものだと思っているらしいが、それは大きな間違いだ。真実は、少なくとも標準の治療は受けられる。はっきり理解していなきゃいけないのは、ちゃんとした薬の代わりに砂糖のかたまりをもらうなんてことにはならないってことだよ。』
数が集まれば強さになる
ランスは小児がんの子どもの親たちを、強力な例として挙げています。『自分の子どもが癌にかかったら、誰もがどんなことをしてでも最良の治療を受けようとするだろう。子どもの治験参加率は大人の10倍以上もあるんだ。そうやって小児がんの子どもたちの多くは今では助かるようになってきたんだよ。大人たちはこうしたことを見て学ばなければいけないね。』
みんなの心構え、それがすべてだ
ランスは癌の治験は治療を進歩させるのに重要だと認めていますが、個人的にはこうも言っています。『がんは人を差別しない。今では幸いなことに、早期発見できれば多くのがん患者は完治している。みんなに検診を受けて、癌という病気に注意を向けるように宣伝していかなきゃいけないね。』ランスは今までの業績に安住するつもりはありません。ランス・アームストロング財団での活動も続けて行くつもりです。これからも世界を変えて行くために。『がん患者も、がんから生還した人も、情報を集めるのをやめてはいけないんだ。がんに関する知識をずっと学び続けなければいけないと思うよ。』
残念なことに、日本では治験の安全性を高めるための「GCP」という手順の導入以来、治験実施件数が4分の1に減ってしまいました(参考)。現在、日本で新薬が使えるようになるまでの期間は、米国に比べると約2年の遅れがあるそうです(参考)。日米の審査にかかる時間の差はかなり短縮されてきており(米国9ヶ月、日本12ヶ月)、日本での新薬承認の遅れは治験に時間がかかるためとも言えるのです。未承認薬の認可を求めていくと同時に、わたしたちにもできることがあるのではないでしょうか。
(2006.10追記)国立がんセンターのがん情報サービスのページができて、ようやく治験の検索がやりやすくなりました。「 がん関係の臨床試験(肝・胆・膵)」のページに現在行われている治験の一覧表があります。「臨床試験について」もぜひご覧ください。
(※治験はこわくない(2)はこちら)
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