治験体験記・後編
前回の続きです。
- 乳癌の場合は、米国で毎年診断された患者の59%が臨床試験に参加するそうです(参考)。
- 「結局のところ、私が吐いているお蔭であなたの未来がより良いものになるのかもしれないのだ ー もちろん私は自分のために嘔吐しているのだが、それはあなたのためになるかもしれない。」
「病者にも人助けと希望のチャンスを」(続き)(原文)
治験への参加には、それ以外にも色々な費用がかかる。私の参加した治験のうち、2つは外来一部負担金だけの支払いで済んだ。しかし1つは、2ヶ月も経たない内に請求額が7,000ドルに達した。これほどの金額はどんな家庭でも大きな負担だが、今の私のように病気休暇中でサラリーが6割に減っている身にとっては特に大きい。
治験薬の多くは無料だ。私の場合、薬が厚生省に承認されるまでは無料だった。私の加入している保険はカバー率が高いので、月々の医療費4,300ドルの1%を払えば済む。無保険で治験に参加する人のことを考えてみてほしい。
私は幸運だった。住んでいる場所の近くに大きな研究病院があった。主治医は自分でもいくつもの治験をやっていたし、有名な医師を何人も知っている。会社はずっととても親身になってくれている。私は色々な交渉ができる位には元気だ。そして良い保険に加入していた。これらの条件のうち1つでも欠けていたら、私が生きのびる確率は消えてしまっていただろう。
システムを変えることは容易ではない。人間を対象とした試験には特別な注意と、よく組織された事務部門と、監視の目が必要だ。大きな組織では、資金のムダが生じにくい。しかし我々は、私のような幸運をそれほど持たない人のためにも努力を続けなければいけないのだ。
製薬企業が上げられる利益のことや公益がかかっていることを考えれば、利害関係のある者全員に呼びかけて、病気になったり死が近い患者も住所や家計を気にせずに臨床試験に参加できるようにシステムを改良する運動を起こしても良いのではないだろうか。これには、モルモットになる権利を買うために一円たりとも支払わなくてよいという仕組みも含まれる。結局のところ、私が吐いているお蔭であなたの未来がより良いものになるのかもしれないのだ ー もちろん私は自分のために嘔吐しているのだが、それはあなたのためになるかもしれない。
全国的に、いや全世界的に大きな努力が良い薬を早く作ることに向けられている。民間資金や公的資金を増やせば大きな進歩を成し遂げることができるだろう。臨床試験についても同じだ。皆の力を集めれば、治験システムの不透明さを打ち破り改善することが可能になるだろう。これはとても大切な、そして乗り越えられる壁だと思う。一番高い壁は、新薬を発明する部分ですよね?
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(※治験はこわくない(1)はこちらです。)