やぶいぬ応援団

膵臓癌闘病記や生還者のアドバイス、新薬の治験情報や研究など元気が出る話題を個人が集めたブログです。 <免責事項>本ブログは特定の治療法や薬の使用を推奨するものではなく、このブログの情報を利用した結果について筆者は責任を負うことはできませんのでご了承ください。

ある夫婦の軌跡 〜RaulさんとBlue Birdさん〜

blue bird

Blue Bird(青い鳥)さんは、以前「癌と悩みと悟りと」で触れましたが、すい臓がんの夫ラウルさん(キューバの海の男。写真はここ)を2年近く介護してきました。ラウルさんは手術後しばらくして再発を経験しましたが、Blue Bird さんの献身的な介護もあって数々の危機を乗り越えてきました。Blue Bird さんのとても強い投稿の数々は、Johns Hopkins Online Discussion Board の大きな輝きとなっています。


再発した時の気持ちの持ち方については、NCI(米国立がん研究所)のパンフレットがあります。


Blue Bird さんはご主人がすい臓がんと診断されてからの気持ちの変遷について掲示板に投稿したことがあります。一部を訳出してみます。

ここまでの道程 9月17日 Blue Bird


みなさんこんにちは。


ここ数週間の間、人生を振り返っていました。ひょっとしたら、ウィップル手術を乗り越えて再発を経験した人間の介護者また妻としての2年という時間が積み重なって私に影響したのかもしれません。


はっきりわかったのは、
1. 毎日死について考えなくとも進んでいけるようになるのに、私は6ヶ月かかりました。私が今までの人生でぶつかった一番大きな心の変化でした。


2. この掲示板で出会った人々は一番の宝物です。アメリカ対がん協会も、PanCANも色々資料を送ってくれたりしましたが、実際にこの病気と闘っている仲間とは比べ物になりませんでした。


3. 毎日、夫の人生をプラスにしようという自分の決心を思い出しています。私は今日、夫に何かプラスになることをしてあげられたか、夫が自分にとってどれだけ大切な人かそして夫をどれほど愛しているかちゃんと伝えられただろうか? 今日で世界が終わるとしたら? 10月は私たちの14回目の結婚記念日です。私は、こんなにもしっかりとした、揺るぎない、真実の結婚ができてとても幸せだったと思います。ここまで来るにはあらゆることを乗り越えなければならなかったけれど、努力をすれば、収穫がそれだけ素晴らしいものになるのです。本当のところを言うと、この病気にかかって最初の半年は100%ポジティブな人にも信念の人にもなれませんでした。私はすっかり落ち込んでしまって、夫が望んでいるような「チームプレイヤー」にはなれませんでした。でも今はそれを乗り越えて前向きな気持ちでいられるようになりました。前向きな気持ちでいることは、私ができる最も小さいことでしたが最善のことでもありました。


現在、ラウルさんは在宅ホスピスケアを受けています。最初はホスピスに入院していましたが、その時のBlue Bird さんの書き込みを紹介します。

今日、家に帰ってきました 12月14日 Blue Bird


・・・今週はあらゆることが起こった一週間でした。胸を刺すような衝撃、思いもよらぬ訪問者、明らかになる真実。本当に信じられないの一言です。


ラウルは病室で私に心を開いてくれました。前に、私のいちばんの問題はラウルの閉ざされた心の扉の鍵をどうやって手に入れるかということなのだと書いたことがあります。つまり、私の声をどうやったら彼に届けられるかということです。私は、ラウルに返事をしてほしかった。そうでなければ私自身が崩壊してしまうでしょうから(今の私は陶器のようにデリケート、なんてね(笑))。ということで、私はラウルに、人生でどれだけたくさんのものを彼からもらったか、そしてそれを自分が行きている限りずっと持っていくつもりだということを話しました。私が賢く強い女性になれたのは、彼からもらった知識のおかげです。それから、あなたと結婚してからの14年間は私の人生の中で一番いい時だったと言いました。この町で二人で、シーフードの店を切り盛りしてどれほどうまくやってきたことか。


ラウルは私の手をとり、私と結婚して良かった、誇りに思っていると言いました。私はそこで立ち上がってトイレに入りました(私が崩壊してしまうのを見せなくてすむようにです。あー、壁があるというのもたまにはいいことだわ。)そして私はトイレから、「ハーイ、ラウル」と大きな声で言いました。ラウルはドアのすぐ外の椅子に座っていました。「ハーイ、何だって?」 「ね、一つだけ約束してほしいの、これからも一生私のそばについていてくれる、それだけ約束してくれる?」その次の瞬間、ドアが開いて気がつくとラウルがそこにいて私の頬を両手で挟んで私の目を覗き込んでいました。彼はこれからもずっとずっと私のそばにいてくれると約束してくれました。ラウルから私への、これが最後の贈り物になるでしょう。でもこれは私が心底欲しいと思っていたものだったのです。ラウルは、私が彼のためならこの世の果てまで行くであろうこと、彼が私の存在そのものだということをわかってくれました。私は本当にラウルを愛しています。彼と結婚できたことを、誇りに思っています。
・・・


Blue Bird さんは今もホスピスケアのアドバイスなどを掲示板に投稿しています。本当に強い女性です。


Blue Bird さんとラウルさん、そしてこの病気と闘っているすべての方々に、メリークリスマス。

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