良い患者になるためにーある化学療法医からの提言
以前「良い医者を選ぶために」という記事を書きましたが、「良い患者になるために」という記事も書かなければ『やぶいぬ応援団』は一方的な応援団になってしまうでしょう!
ということで、医師からの患者への提言を取り上げてみます。ビンセント・ピコッチさんは、アメリカシアトル州のバージニア・メイソン病院の腫瘍内科部長です。特に消化器癌を得意としており、膵臓がんの手術前後に行われるVirginia Masonプロトコールは全国的に有名です。
Picozzi医師の講演のスライドを日本語訳してみました。これは3月12日の日記でも言及したアメリカの膵臓がん患者団体パンキャンのシンポジウム 2007(シカゴ)からの引用です。原文と写真はここにあります。腫瘍内科医の1日のスケジュールなども載っており(2年前の記録ですが)、大変興味深いものです。
少し長くなりますが、全文翻訳します。
医療チームと良い関係を作るために
Vincent J Picozzi (医師、医療管理士)
Virginia Mason Medical Center
Seattle, Washington
バージニア・メイソン医療センター
ワシントン州シアトル市
ある日のPicozzi医師のスケジュール(2005年) 8:40 膵臓 CDDP/5FU/IFN
9:00 膵臓 CDDP/5FU/IFN
9:20 乳房 経過観察
9:40 膵臓 CDDP/5FU/IFN
10:00 大腸 FOLFOX
10:20 膵臓 経過観察
10:40 膵臓 Gem/Ox
11:00 慢性リンパ性白血病 経過観察
11:20 膵臓 Gem/Tax
11:21 膵臓 Gem/Tax
11:40 骨髄異形成症候群 経過観察
12:00 膀胱 経過観察:ステージ再評価
12:20 メラノーマ 経過観察
12:40 膵臓 経過観察:ステージ再評価
13:00 膵臓 Gem
13:20 膵臓 経過観察:ステージ再評価
13:40 膵臓 Gem/Tax
医療の本質は、患者と医療従事者との共同作業にある
患者ー医療提供者関係の目標とは
- 強いつながりを作り上げる
- 患者の望む結果を出す
- 時間と資源を有効に利用する
患者ー医療提供者関係というものは・・
- 他のサービス提供者との関係と何ら変わる所はない!!
- 医療者の側も、あなたとの関係が良い結果を出すことを望んでいる
しかし、以下の面では他のサービスと異なる
- 医療者はたくさんの患者を抱えている
- 関係を客観的に見ると、感情の問題もあれば、非常に複雑な理論も存在する
- 医療者がたいてい「先手を取ってしまう(優勢になる)」
- 医療者によって方向性が異なる
- 「難しすぎる」言葉を使う医療者もいる
- コミュニケーションを取るのに限られた時間しかない
- どちらの側にも複数の人間が関わっている
医療チームと良い関係を作り上げるために自覚しておいた方がが良いこと・・
- あなた自身のゴール、どういう生活がしたいのかをはっきりさせておく
- どんな治療を受けたいか、あるいは、どんな治療を受けたくないか?
- 人間としてどのように扱ってほしいのか
そして自分の性格も知っておくべき
- どういうコミュニケーションの仕方が好きか(紙に書いてもらうか、言葉で説明してもらうか、体で示してもらうか)
- 性格のタイプ(マイヤーズ・ブリッグスなど)
診察にあたって自分の考えをまとめておく
- 診察の前に
- 診察中に
- 診察が終わってから
診察前に自分で準備しておくこと・・
- 今回の診察の目標、目的を設定する
- 今回の議題に注目する・・「いま最も解決が必要な3点は」
- 質問事項のリストを作っておく
- 担当医の反応を予想する
- 担当医以外の医療チームのことを思い浮かべ、その人々にどのように助けを求めればよいか考える
・・そして周りからの助けも得ておく
- 親戚や友人
- テープレコーダー
- 自分の日誌
- 自分の検査結果、記録
- 医学用語について少し調べておく
医者が親身になる患者とは・・
- やる気がある人
- 自分の考えが整理されている人
- 自分の感情と事実をはっきり伝えられる人
- 自分の病気についてよく理解している人
- 医療チームのことを気づかってくれる人
- 感謝の気持ちを持てる人
医者が嫌いになる患者とは・・
- 自分で判断できず、いつもぐずぐずしている人
- 医者の話を聞かない人
- 医療チームのメンバーに敬意を払わない人
- すぐ言い争いになる人(患者と付き添い人の間で言い争いになる人もいる)
- つぎつぎ人を連れてきて、何度も説明を要求する人
診察中は・・
- あなたがボスだということを忘れないで! 自分が優位に立って物事を進めて行くこと
- まずはじめに、今回の議題を一緒に確認する・・優先順位をつけること!
- 自分の気持ちを言葉に出す
- 事実を語る
- もしコミュニケーションを取りにくいと思ったら、それを口に出して言ってみる
診察をつまづかせる主な障壁
- コミュニケーション
- 感情
- 印象、先入観
コミュニケーションの障壁と戦う
- 理解するためにはまず質問しなければいけない
- 「共感的コミュニケーション」のテクニックを使う
- 目的を持って話をする
- 自分のために話をする
- 自信を持って話をする
感情の障壁と戦う
- 人は感情を持っていることを理解するー自分も、医療チームの人々も
- 自分の感情をはっきりさせて、それに気づく
- 「気持ちを吐き出しても構わない」
- でもいつも感情ばかり吐き出し続けるのは良くない
- 感情を身振りで表す
印象の障壁と戦う
- FEAR(恐れ)は、「 False Education Appearing Real(間違った知識が本当のように思える)」から来ているー正しい知識を持とう!!!
- 医療者の立場から自分を見てみる
- 自分の印象について話し合ってみる
- 理解すること=納得すること
- 印象が矛盾したら、それを解消する機会を求める
インターネットはあなたの主治医ではない:誰を信頼するのか?
- 医師 6割
- インターネット 3割
- よく分からない 1−2割
ユーモアは役に立つ!
担当医以外の医療チームの人々とも接触してみよう、そうした人々の違いは・・
- 専門分野
- 知識
- コミュニケーションのスタイル
- 性格
- 時間の余裕
診察の後で・・
- 言われたことを復習する
- 次に聞きたいこと、はっきりさせておきたいことを書きだす
- 関係者に診察の話をする時は、自分の話すことに責任を持つ
- 自分がどうしたらコミュニケーション能力を上げられるか考える
コミュニケーション上の問題点
ありがとうございました。
何かご質問は?
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