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膵臓癌闘病記や生還者のアドバイス、新薬の治験情報や研究など元気が出る話題を個人が集めたブログです。 <免責事項>本ブログは特定の治療法や薬の使用を推奨するものではなく、このブログの情報を利用した結果について筆者は責任を負うことはできませんのでご了承ください。

体重減少と戦う食事療法

Petzel


体重減少は、黄疸・腹痛と並ぶ膵臓がん3大症状の一つです。体重の減少は、がんと闘う上で最も大切な体力の減少をも意味しています。では、それに対処する方法はあるのか? 答えはずばり、Yesです。


以下の栄養士による講演記録をご覧ください。これはパンキャンアメリ膵臓がん患者会)の広報誌、Outreach 2007年7月号から翻訳したものです。体重減少の原因を知り、対処法を学んでいきましょう。

食事と栄養:体重減少と戦う
マリア・ペッツェル、認定栄養士、認定経腸・静脈栄養士


膵臓がんにかかると、体重減少がよく起こります。原因としては治療の副作用や、がんの症状の一つとして、あるいはがんによって体内の栄養代謝が変化して起こることもあります。あなたの医療チームと話し合って、あなたの体重減少の原因を突きとめ最適な治療を決定していくことはとても大切です。週に5ポンド(2.3 kg)以上の体重減少(または増加)がある場合には、すぐに主治医に伝えましょう。水分の代謝に重大な問題が起きている可能性があるからです。


体重減少の原因としては以下のようなものが考えられます。

  • 食欲が無い、または吐き気がして水分や食事を充分に摂れない
  • おう吐
  • 下痢
  • 消化不良
  • 脱水
  • 腫瘍による体重減少


体重減少をコントロールするために、以下のような方法が使えるかもしれません。

  • 栄養士に食事・栄養のカウンセリングを受ける。
  • 食事と間食のスケジュールを立てましょう。一回の食事を少量にし、1日に食事と間食を6ー8回摂ります。
  • 高カロリーの食事を摂りましょう。栄養価の低い食事や飲み物(ソフトドリンクやアメなど)は避けること。
  • 医療用栄養ドリンク※をおやつ代わりにしましょう。食後に薬をのむときに、水の代わりに医療用栄養ドリンクを使いましょう。
  • 吐き気止めの薬を医師の指示通り服用しましょう。
  • 下痢を起こすようなものを食べるのは止めましょう。
  • 消化酵素(膵酵素)の使用について医療チームに相談しましょう。正しく膵酵素を服用できているかチェックしましょう。
  • 主治医に、体重減少を防止するために食欲刺激剤などの薬を使えるかどうか聞いてみましょう。
  • 適量の水分をとりましょう。高カロリー・高タンパクの飲み物を飲みましょう。
  • 充分な休息を取り、また休息と運動のバランスを取りましょう。
    • 毎日30分の活動を目標にしましょう(散歩など)。
    • 運動を少しずつに分けて行いましょう(一回を5分から10分にして、一日の合計が30分になるようにする)。


腫瘍による体重減少

上のアドバイスを実行しても体重減少が続く場合には、がん腫瘍による体重減少が起きているのかもしれません。腫瘍による体重減少は悪液質(あくえきしつ)とも呼ばれますが、体内のカロリーやタンパク質を利用する経路で複雑な問題が起きている状態です。膵臓がんからは、多くの場合「サイトカイン」という化学物質が分泌されています。これが体内の代謝経路を変えてしまうのです。サイトカインがあると体は通常よりカロリーを燃焼するようになり、筋肉中のタンパク質が分解され、同時に食欲が減って食事の量が少なくなってしまいます。このプロセスによって体がやせ、筋肉が減少して疲労してきます。体重減少と栄養失調は、生活の質(QOL)や毎日の活動、さらには治療効果に影響します。また予定外の入院や、入院期間が長くなったり、感染症などの合併症につながることもあるでしょう。


腫瘍による体重減少が起きている人の対策としては、栄養・食事カウンセリング、経口栄養補助食品(サプリメント)、食欲刺激剤が挙げられます。抗がん剤や化学放射線療法などでがんを治療して腫瘍の増大をコントロールすることができれば、体重減少も防ぐことができるでしょう。


魚油参考)が腫瘍による体重減少を防ぐという研究結果がいくつか発表されています。具体的には、魚の油の主成分であるEPA(エイコサペンタエン酸)が有効だというデータが出ています。EPAは、上で述べたサイトカインの産生にともなう代謝異常を抑えて悪液質を防ぐのだろうと考えられています。魚油は、医療用栄養ドリンクや栄養補助食品として摂ることもできます。いくつかの研究結果から、魚油の最適投与量はEPAとして一日2グラム(2000 mg)と考えられています。一般的に言って、EPAを含む食品を食べたとしても体重減少を防ぐ量には不足です。医師や栄養士は、EPAをどんな形でどのぐらい摂るのが良いのか担当患者にアドバイスするべきだと思います。


医療用栄養補助食品:以下にあげたような液体栄養ドリンク(8オンスー240cc)を2缶とることで、EPAの1日最適投与量を摂取することができるでしょう。リソース(R)・サポート(R)・プロシュア(R) これらの食品には脂肪や食物繊維が多く含まれているので、こうした液体補助栄養を飲み始める時には1日に半缶(4オンスー120cc)からはじめ、3日ごとに半缶ずつ増やし、最終的に1日2缶まで持っていきます。こうした特別食品を1日に2缶以上飲んでも、おそらく治療上有益な点は無いと思われます。ですから、もしさらに液体補助栄養の量を増やしたい場合には、これらではなく下に書いた「普通用」または「糖尿病用」ドリンクから選ぶのが良いでしょう。


栄養補助食品(サプリメント):無臭化した魚油を、カプセルや水薬、あるいはゼリーのような形で摂ることもできます。サプリメントFDAアメリカ食品医薬品局)の管轄外なので、カプセルや水薬中に含まれるEPAの質や量は、製品ごとに大きな差があります。魚油製品の安全性や効力については、www.consumerlabs.comのサイトを参照してください。

※医療用栄養ドリンクの例:
普通用:ブースト(R)、ブーストプラス(R)、ブースト ハイプロテイン(R)、エンシュア(R)、エンシュアプラス(R)、エンシュア ハイプロテイン(R)カーネーション(R)、インスタント・ブレックファスト(R)


糖尿病用:ブースト グルコースコントロール(R)、グルサーナシェイク(R)カーネーション(R)、インスタント・ブレックファスト(R)ノンシュガー


腫瘍による体重減少のための製品(通販のみ):プロシュア(R)(ロス)、リソースサポート(R)(ノバルティス)

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